ずいぶん前に読み終わってたんですけどね~~~^^;
日本における「幸福論」
日本という国において、「幸福」とは何かを考える時、長らく続いた自民党政権という要素と、イエ制度の名残とも言えるかもしれない、大黒柱が一家の稼ぎの大半を担う構造が大きく影響を与えていた、と本書は指摘します。
自民党はよくも悪くも利権配分機構として機能してきた結果、(中略)幾重にも折りたたまれた「箱庭王国日本」の幸福を守ることに寄与してきた。(P.20-21)
背景にあるのは、大黒柱の男性一人が一家を養うという「家族賃金モデル」(P.21)
ここで言う「箱庭王国」の表現に、とてつもない筆者の日本に対するアイロニーを感じます。
まあ、たしかに外海で大きく隔たれた島の中、国民は大きく異なる文化との直接的に向きあう機会を逸してきたことからも、「箱庭王国」とは言い得て妙かもしれません。
女性の力をどう活かすのか
どうもダラダラ書いてしまうクセのようなので、今回はスパッと気になった点をピックアップ。
この本で一番心に残ったのは、「母親たちは地域社会のサイレント・マジョリティ」(P.149)の節。
中でも、
どのような場所であっても、そこから逃げられない人間こそが、真にその場の問題の解決を願い、実質的なコストを負担せざるを得ない。したがって、母親たちの声を汲み上げられないということは、地域社会の声を聴かないことに近しい。(P.150)という箇所です。
この点について、心情的にはすごくよくわかります。
ただ、サイレント・マジョリティというのは広く捉えれば市民のほとんどはサイレント・マジョリティと捉えることができ、そういう人達の多くは「無関心」であることもまた多いと言えます。
無関心でなくても、「あきらめ」に入っている場合もまたあり、そういう人達を巻き込んでいく、参加してもらうようにしていくことの難しさは、地域再生の現場を少しでも知る人間なら誰もが共有できる悩みではないでしょうか。
ただ、女性の力を活かす、発想を取り入れるということは必要だと思います。
生物が多様性を有するように、アイディアも多様性に富んでいる方がアクションの選択肢が増え、結果として参加する人が増えることにつながり、地域の総体として活力が高まると考えます。
それがその地域のソーシャル・キャピタルとして醸成されていくのでしょう。
おわりに
僕は最近、地域計画系の提案をする時には必ず、現状把握として、若いお母さん、働き盛りの30~40代男女へのヒアリングを入れてます。
短期的成果だけ見れば、「そんなヒアリングしても変わらないでしょ」となるのかもしれませんが、それは違う。
ヒアリングを通じて地域を客観的に見つめ直すことになります。
すると、ヒアリング対象者の中からはもしかしたら具体的なアクションを起こそう、ということにつなげていく人が出てくるかもしれません。
ヒアリング調査にそういう恣意性というのかな、誘導をするようなやり方はマズいと思いますが、ヒアリングを通じて自己と地域との関係性を客観化できる、というのはひとつの効果であり、それは将来に向けて大きな波紋を創りだすと思います。
だからこそ、若い世代へのアンケートではなく、直接対面式のヒアリングが重要だと考えます。
概要
書名 平成幸福論ノート 変容する社会と「安定志向の罠」
著者 田中理恵子(Tanaka Rieko)
出版 光文社新書(2011/03/20)
■目次
はじめに
第1章 日本の「幸福論」の迷走
第2章 結婚と孤独死の間に
第3章 「会社村」と「草食男子」の間に
第4章 「安定志向」がリスクに転じるとき
第5章 「昭和の鎮魂」から「つながりの再編」へ
著者 田中理恵子(Tanaka Rieko)
出版 光文社新書(2011/03/20)
■目次
はじめに
第1章 日本の「幸福論」の迷走
第2章 結婚と孤独死の間に
第3章 「会社村」と「草食男子」の間に
第4章 「安定志向」がリスクに転じるとき
第5章 「昭和の鎮魂」から「つながりの再編」へ
おわりに