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2011-12-12

図解『キュレーションの時代』 ライフログとチェックイン2

前回、『キュレーションの時代』より、ライフログとチェックインについて書きました。

図解『キュレーションの時代』 ライフログとチェックイン1

ざっとおさらいをしておくと、

  1. マーケティングの新しい手法としてライフログが注目される
  2. ライフログ収集にあたって、プライバシーの問題が発生する
  3. プライバシーの問題をクリアしたのは、自ら情報公開を宣言するforsquare式「チェックイン」サービス
  4. 特定の視座への「チェックイン」では情報の「タコツボ化」の問題を引き起こすのでは?
といった流れになりますね。

ワタクシと「視座」とのズレがセレンディピティに導いてくれる


しかし、本書では「タコツボ化」は回避できる、としています。

その理由は、自分が興味・関心を持つ「視座」は、たしかに自分(ワタクシ)と同質性が高い。しかしながら、完全なる一致ではなく必ず、微妙な「ズレ」を伴っています。
それは、ワタクシとチェックインした視座との間には考え方やモノの見方の違い、過去や背景の違いなどがあるためです。

そして、この「ズレ」によって、視座から得られる情報には必ず何らかの「ノイズ」が混じります。

たとえば、
「この人は組織論やチームワークの話が面白いからチェックしておこう」
とチェックインした視座から、ふとした拍子にAKB48だと篠田麻里子がかわいい、などといった情報が流れてきたりします。
これはまぁ、極端ですが、こういったノイズが普段の「組織論」とは違う側面を見せてくれて、幸運の偶然=セレンディピティが発生する、というのです。


ここからは僕の経験談になりますが、なるほどチェックインという仕組みは面白いな、と思います。
誰に強制されるでもなく、自らの発意で自分の居所をオープンにするわけですから。
その発展型として、一時期「ソーシャルランチ」なるものまでPRされていたことも記憶に新しいところです。

それでも当面はRSS取得とgoogleアラート中心の「チェックイン」で行こうと思いますけれど。

欲を言えば、このブログが誰かの視座となれたら、最高ですね。

2011-12-10

図解『キュレーションの時代』 ライフログとチェックイン1

図解『キュレーションの時代』 第2弾です。

前回は、「応援消費」について触れられている箇所を図解してみました。
図解リーディング 『キュレーションの時代』より「応援消費」

今回は、マーケティングという視点とライフログという視点について、整理してみました。
ライフログとマーケティングということについては、大きく二つの問題が生じます。

ひとつは、「プライバシーの問題」でもうひとつは「タコツボ化の問題」です。


ライフログをマーケティングに活かしている企業の代名詞といえば、Amazonですね。

多くの方が「こんにちは、◯◯さん。おすすめ商品があります」という表示を見たことがあると思います。
これは、Amazonから過去に買った商品データが蓄積、分析されておすすめ商品を提案してくるシステムで、利用する方としては便利ですよね。

でも、ふと冷静になって考えると、「その情報って本当に大丈夫?」と思います。
プライバシーの問題ですね。

このプライバシーの問題を軽やかに乗り越えていったのが、forsquareの「チェックイン」式サービスなのかもしれません。

チェックインで「プライバシー」はクリアできるが…「タコツボ化」はどうか



自分がどこにいるのかということを、自らの意思で宣言(チェックイン)するわけですから、プライバシーという問題はクリアされているように思われます。

この「チェックイン」は、何も場所だけに限ったことではなく、「検索キーワード」や「面白いブログ」というものへのチェックインもあります。

キーワードなら、例えばgoogleアラートというサービスで、あらかじめ登録しておいたキーワードに関する情報が自動的に取得できます。
ブログならRSSを登録しておけば、更新されたことが通知されます。

本当に情報を集めることに関しては楽になってるなと思います。


しかし、僕もずっと気にしていたことであり、ネットに関する批判のひとつとしてもよく指摘される
検索エンジンは情報をタコツボ化してしまう
ということについての問題が残ります。

一応、タコツボ化ということについて説明しておきます。

イメージしやすく、googleアラートを使った想定でいきますと、僕は現在googleアラートに、次のキーワードを登録しています。
  • ジオパーク
  • ライフハック
  • 地域再生
  • マーケティング
こうしたキーワードに引っかかったブログやウェブサイトがあると、毎日1~2回自動的にメールで概要とリンク先を教えてくれるナイスなサービスです。

がしかし、ここで「タコツボ化」が生じているのです。
つまり、ジオパークやライフハック、マーケティング等に関する情報はある程度これで得られてしまうため、どこかで「満足」してしまう虞があるのです。

本来なら他にも必要な情報、たとえば「エコツアー」だとか、もっと広く「観光産業」といったキーワードで集めるべきかもしれません。
もしかしたら、「著名人」といったキーワードで著名人の関心がどこにあるのか、社会のトレンドがどうなのかを把握することが必要かもしれません。

必要かもしれませんが、今の僕の仕組みでは、それらは漏れてしまいます。
これこそが、「タコツボ化」の問題です。

自分の興味・関心のあることしか情報を得ない、他の情報が入る機会さえ用意しないようになっている、というものです。

よく、新聞はあらゆる情報が掲載されているので、一読しておけばざっと社会情勢が理解できることと対比されますね。


長くなりましたが、ライフログとマーケティングという視点について、まず二つの問題が生じることと、「チェックイン」で一つ目の問題は乗り越えられることがわかったと思います。

次回はチェックインとノイズについてです。




2011-12-08

ネットワークはあるべき時に生まれる


出会いに感謝 - イラスト素材
(c) こんにち和イラスト素材 PIXTA



今日は、ネットワーク(人脈)づくりのお話。

仕事をしていれば、それなりにいろいろな方とお会いする機会があり、名刺交換などもさせていただきます。
また、そこで知り合った方がまた新しい方を紹介してくださる、ということもあります。


時間を少し戻して。。。

社会人1年生~3年生ころまでは、このネットワークづくりというものがどうしても性に合いませんでした。
性に合わない、というよりも自分の考えとして「ちょっと違うんじゃないか」という思いがありました。

それは何かというと、
社会に出たばかりの今の自分がいろんな人に会って「人脈づくり」と鼻息荒くしても、意味ないんじゃないか?
というものでした。

これには多分に人見知りというコンプレックスの影響もあります。

でも、それ以上に
人は出会うべき時に出会う
という考え方だったので、無理してネットワークづくりに励むことができませんでした。

この考え方自体は今もさほど変わりません。

とは言え、いろいろな出会いを通じて積極的にネットワークを作っていくことも「アリ」だなと思うようにはなっています。

だから、ネットワークづくりにガンガン動ける人を見ると、自分にはできないことを平然と乗り越えていく様を見ているようで、「あー すごいなこの人」と素直に感心します。
これは無理やりやっている、というよりも、その人が「いま」と感じてるから、良いネットワークが生まれていくのだろうと理解しています。

それと、「ひとと出会うことが好き」という人なんだろうなと思いますね。


要するに、自分のペースで人と出会っていけばいいんだ、というお話。

2011-12-07

図解リーディング 『プロジェクトマネジメントの基本』より「ミッションとモチベーション」

前回、『プロジェクトマネジメントの基本』の中から、ドラッカーの5つの質問の応用について書きました。
図解リーディング 『プロジェクトマネジメントの基本』

今回は『プロジェクトマネジメントの基本』第二弾。

ミッションの理解とモチベーションについて。

ミッションの理解について、というとちょっとわかりにくいかもしれませんが、要は自分の作業・役割が、全体の中でどう貢献しているのかということを、どれだけ自己認識できるか、ということです。

ドラッカーの寓話として本書では、教会建設現場でドラッカーが石工に質問をします。

「あなたは何をしているのですか?」

それに対する答えが、石工たちのミッションに対する理解度にあらわれています。


ミッションの理解度が高いモチベーションを誘い、創意工夫を生み出す


僕の場合、自分が任された、あるいは今やっている仕事が、一体何のためにやっているのかが不明確だとやる気(モチベーション)はあがりません。

何のための作業かわからない状態では、その作業はあくまでも「他人の仕事」の手伝いでしかありませんので、「こうしたらいいんじゃない?」とか「こういう考え方も取り入れたらいいかも?」なんてことも考えません。

そしておそらく、こういう感覚は多くの人に共通するのではないでしょうか。

僕ができているかどうかはさておき、意識しているのは、チームで動く場合には、本来の目的を伝えるように心がけています。(←多分できてない)







2011-12-06

図解リーディング 『キュレーションの時代』より「応援消費」

図解リーディングシリーズ2回目です。

今回は、佐々木俊尚の『キュレーションの時代』から、個人的に今キーワードとして考えている「共感」について触れられている箇所です。




モノに対するお金の払い方、価値観は人それぞれだと思います。

「かっこいいから」、「かわいいから」、「見栄えよく」、「他の人も使ってるから」……。

こういう欲求から実際の購買につながってきたのがこれまでの社会だとしたら、これからは?
いや、今すでに変革が起きているのかもしれません。

そのキーワードこそが、「共感」であると感じています。



僕が「共感」の重要性を認識したのはほんとつい最近のことで、2010年10月、島根県で開催されたNPO活動推進全国大会が契機です。
その中で、日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆氏の講演の中で強調されていて、自分の中での感覚にピッタリときた、という経験がきっかけです。

図では「モノ」と書いていますが、「コト」と置き換えてもいいと思います。

モノでもコトでも、「良いもの」であることは大前提ですが、そこから対価を支払いたい、と思ってもらうためには、作り手側の高いプロ意識や、ポリシー、こだわりがあることが求められます。

自分はどうか?

僕も、仕事のスタイルにはある程度ポリシーを持ってやっているつもりですが、まだまだ甘いところもあります。

2011-12-05

図解リーディング 『プロジェクトマネジメントの基本』

いつも参考にしているビジュアルシンキングというサイトがあります。

ブログのネタに困るということもあるのと、自分の本を読んだ内容をアウトプットしたいという願望をひとつにするため、図解リーディングのすすめ – ビジュアルシンキングという手法をちょっと真似てシリーズ化してみようかと思います。

ということで、第一弾は『プロジェクトマネジメントの基本』から。





ドラッカーは、非営利組織の活動とその評価のために、5つの質問を設定しました。

その質問とは次のようなものです。

  1. 私たちの事業の目的は何か
  2. 私たちの顧客は誰か
  3. 顧客が求める価値とは何か
  4. 私たちの成果は何か
  5. 私たちの計画は

本書では、この5つの質問をベースに、プロジェクトマネジメントに応用して、プロジェクトの目的を明確化し、共有する試みを提案しています。

今取り組んでいるプロジェクトは「何を達成したいか」、その成果を求める「ステークホルダーが誰か」が明確になっているでしょうか。そして、それはプロジェクトチームで、しっかりと共有できているでしょうか。


CSFとは Critical Success Factor の略で、プロジェクト達成のための重要な要因

いろんな場面でプロジェクトは動いていきますが、チームで目的やミッション、成果などを共有できていることは非常に重要ですね。

この本はプロジェクトをマネジメントする、というタイトル通りの内容が淡々とわかりやすく書かれているので、プロジェクトマネジメントをする必要がある人にはオススメの一冊です。

2011-12-02

ソーシャル・キャピタルとまちづくり




1年以上前に書いた文章ですが、ソーシャル・キャピタルに関する文章なので、自分で思い出すために、整理するためにももう一度書きだしてみます。


ソーシャル・キャピタル(Social Capital)という言葉は、日本語にすると主に、社会「関係」資本と訳されます。
これは直訳の「社会資本」とすると、日本ではインフラを想起させるためと言われています。
では、この社会関係資本とは何なのか。
様々な定義があり、一本化された定義はありません。
しかし、いくつか有力な定義が出されているので、そこから整理してみたいと思います。


■ソーシャル・キャピタルの定義

  • R.パットナム

人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を改善できる、信頼、規範、ネットワーク*1といった社会組織の特徴

  • F.フクヤマ

信頼が社会全体あるいは社会の特定の部分に広く行き渡っていることから生じる能力

  • 世界銀行

SCとは、社会的なつながりの量・質を決定する制度、関係、規範である。社会的つながりは経済の繁栄や経済発展の持続に不可欠である。SCは単に社会を支えている制度ではなく、社会的つながりを強くするための糊の役割を果たしているのである。

  • OECD

規範や価値観を共有し、お互いを理解しているような人々で構成されたネットワークで集団内部または集団間の協力関係の増進に寄与するもの

  • W.ベイカー

個人的なネットワークやビジネスのネットワークから得られる資源であり、情報・アイデア・指示方向・ビジネスチャンス・富・権力や影響力・精神的サポート・善意・信頼・協力

  • P.ブルデュー

多かれ少なかれ制度化された相互面識および相互承認の持続的ネットワークの所有、あるいはいいかえると、全体で所有する資本の支援を各メンバーに提供するような集団のメンバー資格に結びついた現実的あるいは潜在的資源の総体

  • J.コールマン

それが存在しなければ不可能であるようなある種の目的の達成を和にする
他の形質の資本とは異なり、ソーシャル・キャピタルは人々の間の関係の構造に内在するもの
個人や生産の物理的装備に備わっているものではない

  • ナン・リン

市場における見返りを期待してなされる社会的関係への投資
社会的構造のなかに埋め込まれた資源
目的とをもった行動のためにアクセスされ動員されるもの

  • A.ギデンズ

個人が社会的支援を得るために頼ることのできる信頼のネットワーク


■雑感

まず目につくのはやはりパットナムが定義した3つの側面「信頼」、「規範」、「ネットワーク」です。
アスレイナーはこの中で、信頼に着目しました。

しかし、いずれの定義を見ても、実はネットワーク(人々の間の関係等)が共通していることがわかります。
ネットワークという人と人との関係性が前提としてあり、その上に信頼や規範といった側面の強弱が加わるのかな。
場合によっては経済的成長、経済効果への投資、といった側面を考えている人もいるようです。

自分の関心としては、ソーシャル・キャピタルが地域の活性化に資するか、どのように培養できるのか、地域への愛着や誇りはどのようにすれば育まれるのかという視点で出発しています。
そうすると、なんとなしに経済効果というような側面は弱いのではないか、と考えます。
こう考えると、果たして「ソーシャル・キャピタル」という言葉自体が良いのか?という疑問もあります。

実際、ボウルズとギンティスは、ソーシャル・キャピタルのアイディアは良いが、用語としてはよくないと言っているようです。
しかしボウルズ=ギンティスは,ソーシャル・キャピタルはアイデアとしては良いが,その用語は良くないという.キャピタル(資本)とは所有できるものをいう言葉であるが,ソーシャル・キャピタルは人々の間の関係を意味するとされているからである.『ソーシャル・キャピタル』,P.16,宮川公男

ソーシャル・キャピタルというものを考えるにつけ、これは一体何なんだろうという思いに囚われてしまいます。

ところで、キャピタルというものはボウルズ=ギンティスが言うように所有できるものと見做すことはできますが、一方で、こう考えることもできるのではないでしょうか。

つまり、キャピタルとは「貯蓄可能なもの」(蓄積)であると。

そう考えると、ソーシャル・キャピタルというものが「キャピタル」という用語であることに不都合はないかなと思います。
むしろ、ソーシャル・キャピタルという用語ではなく、やはり何なのかがわかりにくいことが問題点であると。

やはり僕はネットワークからソーシャル・キャピタルを考えてみたいと思います。


■現時点での追記

以上が、1年以上前に書いた文章だけれど、ソーシャル・キャピタルを「蓄積可能なもの」と見る見方は少し違うのかな、という気がしています。

むしろ「蓄積された結果」がソーシャル・キャピタルであり、ソーシャル・キャピタルのあり様が、そこの地域の人びとの生活様式、コミュニケーション態度として表出している。
だから、Iターン者を受け入れやすい地域もあればクローズドな地域もあるし、商売を良しとする地域もあればそうでない地域もあるのでしょう。

Iターン者が地域に新たに加入することで、地域に存在していなかったDNAのようなものが注入されたとき、アレルギーのように過剰に反応して攻撃してしまうのか、うまく取り込んで新しいソーシャル・キャピタルの方向性を見出すのか、といった違いも出ているのではないでしょうか。


■ソーシャル・キャピタルとまちづくり

先般、ブータン国王が来日したことを契機に、ブータンの「GNH」に対する注目度も、瞬間的に高まりました。

GNHという概念とソーシャル・キャピタルという概念は少し重なりあう所があります。
それは、「経済価値」を過剰に重視しない、という考え方に表れているように思います。

ソーシャル・キャピタルという概念に注目が集まったのは少し前で、地域振興・再生に応用できるのではないかという研究、議論もなされてきていますが、現在のところ有効な施策は打ち出せていません。

個人的な考えにはなりますが、日本の社会システムも今後5~10年程度で大きな変革の局面を迎えるのではないかと思っています。
その時、ソーシャル・キャピタルという概念を認識し、地域としてどのようにソーシャル・キャピタルを醸成していくのか、という戦略を持っているかいないかが分かれ道になるのではないか、という気もしています。

まちづくりに対して、「幸福度」やソーシャル・キャピタルを用いた提案は今のところうまく行ってませんが、今後も提案できる場面があれば、提案したいし、そのためにも自分の中では考え方を整理し完成度を高めたいと思います。