久繁哲之介氏の『地域再生の罠』を読み終わった。
前著の『日本版スローシティ』は読み終えた後、少々がっかりしてしまいましたが、こちらはなかなかいいです。
特に後半は共感できる部分も多く、僕なら氏の本では圧倒的にこちらを推薦しますね。
ただ、『地域再生の罠』というタイトルはどうだろう。
個人的にイマイチだった前半部分が「罠」に該当する内容なんだけど、面白いのは後半だからなぁ。
前半から中盤にかけてはこれまでに2回にわけて書いてきたので、今日は後半について書きます。
7章 B級グルメからスローフード
7章はB級グルメからスローフードへ、ということで久留米を事例として、本質的なB級グルメを目指すべきであるとしています。
本質的な部分は理解しましたが、正直、今のB級グルメについては個人的に懐疑的なので、B級グルメという言葉を用いないほうがいいような気がした。
スローフードへ、という仕掛け方としてひとつ提案されているのが、「食の八十八箇所巡礼の旅」です。
これは面白いなと思うと同時に、あるアイディアをふと思い出しました。
以前、隠岐でWSをやった時、地域の方から、集落まるごとカフェみたいなアイディアが出てきて、「それおもしろいですね!」とワクワクしたことがありました。
実現はできてませんが、人を巡ってほしい、各家のお漬物やちょっとした煮物とお茶やコーヒーが出ててき、おっつぁんらと話をして、面白い話を聞かせてもらう。
これはおもしろいぞ、と。
そんなアイディアを思い出し、似た方向性だなと感じた。
この仕組みの真価はほかにある。それは、お遍路巡りと同じように、巡る過程の楽しさであり、達成した時の充実感である。(P.216)
本書では、久留米ではやきとり屋が、松江ではコーヒー店が、「市民に愛される個性豊かなスローフード飲食店」と位置づけています。
松江はお茶の街であり、コーヒーの街でもある、「香り/薫り」が似合う街なのかも。
8章 スポーツクラブ
8章は省略したい。松江なら、というか島根全体としてスサノオマジックの存在を今後どう支えられるか、そして活かせるかだと思う。
戦略的赤字施設というのは、うん。わかるけど、難しそうだなぁとか思ったり。
9章 公益空間をどう整備するかという問題
最後の章である9章では、公的支援のあり方を示しています。
それは、公益空間への投資に集中せよ、というもの。
ところで、この公益空間。
大田市だとどこなんだろう、と読みながら考えてた。
ふと思いついたのは三瓶山だけど、気楽に、気を使うことなく行ける、滞在できるという意味では少し違うかもしれないな。
やっぱり駅前か?と考え、パル??これもいい線行ってるけどちょっと違う気がする。あくまでも気を遣わずに買い物ができる場、というイメージだ。
と、ここで思いついたのは、倒産したサンノアがもし再建する、あるいは別の方向性で出直すとしたら、橋南地域の人たちが気軽に集い、交流できる「公益空間」としての方向性はありなんじゃないかなぁということ。
そして、考え方としてはあくまでも「戦略的赤字施設」として、ギリギリ許容される赤字ラインを決めておく。
サンノアに交流しに来た人が、近くの肉屋やケーキ屋、食料品店などに少し足を伸ばすことになる?でも足がキビシイか。交通はまた別で用意するか?
隠岐だとどこでしょう?僕はやはり、西郷港ターミナルにそれを期待したいんですけどねえ。
なかなかそうならないですね。
木張りの床で目の前は西郷湾できれいで良好な景観なのに、そうならない。
なぜか。ゆっくりしてもいいんだ、という雰囲気もそうしたいと思わせる雰囲気もないんですよね。
隠岐牛バーガー売ってるコーナーはあるけど、おいしいコーヒーが飲めるとか紅茶が飲めるとかそんなコーナーがないからあくまでもファストなんだろうな、と思います。
あの空間の利用法は、ちょっともったいない気がする。
えー。このようなことを考えることができたのは本書が後半に入ってからエッジが効いてきたからだと思います。
『日本版スローシティ』か『地域再生の罠』か、と聞かれれば迷わず、『地域再生の罠』がオススメですよ、とお答えしましょう。