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2011-10-25

『プレイフルシンキング』読了



わずか二晩で読みきってしまった、読んでて楽しい、まさに「プレイフル」な本でした。

まず最初に伝えておくと、僕は本を読むのにものすごく時間がかかります。
『銀河鉄道の夜』を読み終えるのに3日要してますし……。

この本は180ページほどなので、いつものペースなら間違いなく2週間はかかります。
が、実際には昨日、今日の二日間というか二晩で一気に読みきってしまいました。


プレイフルシンキングとは

本書を貫く、ちょっと変わった言葉「プレイフル」とは何でしょうか。
著者の言葉を引用するとこうです。
プレイフルとは、物事に対してワクワクドキドキする心の状態のことをいう。(P.16)

そして、この心の持ちようは、やや後ろ向きなタイプの人でも、新しいことになかなか踏み出せない臆病な人でも習得できる思考法だとも言っています。

このプレイフルシンキングをうまく活用することで、今まで自分の中で「こうだ」と思っていた世界が違った見え方をしてくる。その変化がまたワクワクドキドキを呼び込む、それがプレイフルシンキングなのかもしれません。


ただ、本書の序章の最後には、「プレイフル」という単語が繰り返し繰り返し連発されているので、初見ではやや鬱陶しさを感じました。


プレイフルシンキングを「仕事」に活かす

著者はもともと「学びの場」についての研究者ですが、仕事の場面も「学びの場」ではないかと考え本書を書いたらしい。

まず気になったワードを拾いながら「振り返り」をしてみると、“プロフェッショナル”であるために2つの重要なキーワードを示しています。

  • 新しい状況にためらくことなく飛び込む「知的好奇心
  • 自分の行動を振り返ってみる「俯瞰的で省察的な視点

この2点です。
知的好奇心に突き動かされながらも、第三者的な視点を持ちあわせて、スパイラルアップを果たしていけるのがプロフェッショナルだということですね。

さらに、人間の心のあり方は大きく2つのパターンに分類されるようです。

  • フィックストマインドセット(fixed-mindset)
  • グロウスマインドセット(growth-mindset)

簡単に言い換えれば、前者は「コチコチに硬直した心」のあり様で、後者が「伸び伸びとしたしなやかな心」のあり様です。

フィックストマインドセットの人は、新たな局面に立った時、「自分にできるだろうか?」と考え、グロウスマインドセットの人は同じ場面で「どうしたらできるだろうか?」と考えるタイプ。

そして、この心理的な差は失敗した時には次のようにあらわれるようです。

  • fixed→自分の“能力が”足りなかったから
  • growth→自分の“努力”が足りなかったから

と。

ここは初見ではよくわかりませんでした。
が、よくよく考えれば、単純なこと。

fixedの場合は、自分の能力に限界があり、どれだけ無力感を感じる。
一方でgrowthの場合、失敗は悔しいが、努力が足りないのだから次は何とかなる、と考える。

この差は仕事をしていく上で、思いのほか大きいのだろうと思います。
なぜなら、僕のような仕事の場合、「同じ仕事」というものは存在せず、常に新しい何かに挑戦せざるを得ないのだから、マインドセットをどう自分の中で仕上げるか、はパフォーマンスに大きな影響を与えます。


自分の場合

自分はどちらのマインドセットも経験したからわかるけど、この心理的な差は大きい。

中学生頃から仕事をし始めて2、3年までは、今にして思えば僕は完全にfixedでした。

とにかく、自分は頭の回転が遅く、人の役に立たない無能であると、かなりネガティブなマインドセットです。
だからというわけじゃないけど、ネガティブであることが悪いことだとは思わないし、ネクラなことも悪いと思わない。

ただ、仕事を始めて数年経った頃、気づくとgrowthな心理になってました。
なぜかはわからないけど、仕事自体が楽しいものだと腑に落ちたことや、楽しみながら仕事をしていいのかもしれない、と少しずつ思えたからかもしれません。


メタ的視点

メタ的に考える人は、上司がなぜそう言ったのか、言葉の奥にある本質を探ろうとする(P.60)
これは、僕は普段からしてしまいますね。
よく言えばメタ的に考えることができている、とも言えますが、自己評価的には相手の奥ではなく、ウラを探ろうとする心理が働いているような気もします。

ただ、こういう風に考えられるようになったのは以前の上司のおかげです。
常に評価されていると考えたほうがいい、といったようなことを教え込まれました。


1人で仕事をするわけではない

これは自分が一番気を付けなければならない点なんですけどね。
いろんな特技を持つ人、ネットワークを活用することでひとりでやるよりもはるかに良好なパフォーマンスが発揮できる。
これは頭ではすごくよく理解しているし、やろうともするんだけど、はっきり言って得意分野ではないです。
この辺をうまくできる人は周囲にもいますけど、本当に尊敬しますし、羨ましくもあるし、悔しくもある。

そういう意味で、本書でいう「最近接領域」という概念はおもしろい。

これは要するに、「あの人が一緒ならうまくやれそうだ」という頼れる他人ありきの自信。

こういうイメージはすぐに持つんだけど、実践が難しいー^^;


最後に

冒頭で書いたように、わずか二晩で読みきってしまうくらい読みやすく、また内容自体がワクワクドキドキモノですので楽しく読めると思います。

内容的には、同じタイミングで読み終わった『キュレーションの時代』と重なる考え方も多く、「うーん、仕事のあり方や仕事との向き合い方が変わってきてるのかも~」と感じることも多々ありました。

新しい環境に立ち向かうというコンテキストは『キュレーションの時代』ではそのままキュレーターという役割と重なるし、ワークショップの主催者だけじゃなく参加者も一緒に準備するというコンテキストは『キュレーションの時代』でふれられた禅や「主客一体」と重なります。

そういう点でも、今この時にこの2冊を読んだことに何か必然性を感じます。

個人的には最近の自分の頭の回転の遅さに今まで以上にイラつき情けなく感じていたので、ある意味で救われ、良い意味で気合をもらえました。

あと、仕事は楽しんでいいんだ、楽しい方がパフォーマンスがあがるんだ、と少し自信を持てる内容ですので、仕事でもプライベートでも「今のままでいいのかな?」と悩んでる方、悩み始めてる方は一読の価値ありです。



上田 信行
宣伝会議
発売日:2009-07-03