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2011-07-07

『フィンランド 豊かさのメソッド』読了


『フィンランド 豊かさのメソッド』を読み終えました。
ので、レバレッジメモから簡単に紹介。


どこかで聞いた隣国との強烈なライバル意識

まず印象に残ったのは、教育環境もさることながら隣国スウェーデンとの関係について。
これは第4章に書かれてるんですが、日本と韓国の間柄とそっくりというか何と言うか。

占領下にあった背景から来る強烈なライバル意識、スポーツ大会では優勝よりもスウェーデンに勝つことが大事などなど。
どこかで聞いたことあるな~と思ってたら、日本と韓国だったという。。

一般的にイメージする「フィンランド」や「フィンランド人」とは違う印象を強く植え付けられた本書ですが、高福祉社会、PISAで一位にランキングされた教育環境という面も面白く読めます。


フィンランドの歴史

フィンランドの歴史は、長く他国に占領・支配されてきました。
12世紀からスウェーデンに支配され、19世紀にはロシアに支配され、日露戦争でロシアが負けたことを機に独立。その後WW2でロシアと戦い、多額の賠償金を負担する、という決して平坦な歴史ではありません。

がしかし。

フィンランドはWW2からいち早く立ち直り、経済的にもいちじるしい発展を遂げました。
その後、バブルがはじけ、高い失業率に襲われているというのがフィンランドの歴史を概観したものです。

また競争力世界一と言われていますが、国民にはあまり実感がないようです。
その理由もやはり高い失業率とのこと。


フィンランドの学習環境

フィンランドは生徒間、学校間による学力差は少ないそうです。また大学は自由度が高く、卒論を書いても卒業しなくても良かったりするそうです。
修士は企業と結び付きが強く、企業からテーマを与えてもらって研究活動に取り組むケースもあるとのこと。
ただし、それは市場開拓の可能性が高い理系の学生に言えることであって、文系はそうではないということ。


市場に結びつきやすい自然科学は政府から資金援助を受けやすいが、その研究が市場と結びつきにくい文系の分野は、政府や周りから資金援助が得にくいといった傾向もある。(P.38)


環境で日本と似てるなと思ったのは、フィンランドは移民が少ないという点です。
移民が少ないということは言葉や文化などバックボーンを共通しているので一貫した教育、一定レベルの教育をしやすい環境にある、ということにつながります。

ただ、最近はやや移民も増えつつあり、この辺も日本と似ている点かもしれません。


おわりに

本書を読んで感じたのは、これまでイメージしてきた北欧フィンランドというものとはやや異なっていました。
森と湖が豊かなフィンランドでの暮らしぶりは、PISAで一位にランキングされることからイメージされるセカセカしたものではなく、伝わってくる空気感は非常にゆったりと流れています。

しかし、高負担高福祉社会としても有名なフィンランドは、高い失業率という課題を抱えながらも、国民には危機感が少ないようにも思われました。
今後もこのシステムが継続しうるものかどうか、移民流入の増加もあり、システムを見なおさなければならなくなる時期は早晩来るのではないか。

その時、フィンランドはどうするのか。
日本はいまその局面に向かって、何を学ぶのか。

印象的だった、政治家の政治家たる言葉を紹介します。

「政治家の役割は、国がいかに危機に瀕しているかということを国民に知らせ、それを克服するには大きな変化、痛みが不可欠であるということをわかってもらえるように説くことだし、そして状況を判断しもっともふさわしいといえる決断を迅速におこなうことだ」(ヘイノネン氏)(P.36)

※ヘイノネン氏とは、オッリ=ペッカ・ヘイノネン氏で、29歳の若さで教育大臣に抜擢された人物。
また、2002年までは運輸通信大臣も務めた、本書曰く「強者(つわもの)」です。







概要


書名 フィンランド 豊かさのメソッド
著者 堀内都喜子(Horiuchi Tokiko)
出版 集英社新書(2008/10/29,第1版第6刷)

目次
 はじめに へぇー、フィンランド? 日本人には馴染みの薄い国だが……
 第1章 不思議でとても豊かな国 ~失業率20パーセントから国際競争力一位へ
 第2章 学力一位のフィンランド方式 ~できない子は作らない
 第3章 税金で支えられた手厚い社会 ~独立心が旺盛でたくましい女性
 第4章 日本と似ている?フィンランド文化
 おわりに