7月末に購入した『コンサルティングとは何か』(堀紘一)を読み終えました。
日本発の一流の戦略コンサルタントファームを育成する、という堀紘一氏。
その具体的な形が、ドリームインキュベータですが、本書ではコンサルタントとは何か、コンサルティングとは何か、ということについて主に書かれています。
また、ここでいうコンサルタントとは、主に戦略コンサルタントのこと。具体的な名称で言えば、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)やマッキンゼーです。
日本で多くみられる銀行系のシンクタンク、◯◯総研といった「総研系」コンサル、あるいはITコンサルは、本書で言うコンサルには含まれていない。
氏が言うコンサルタントには含まれないのかもしれない、自分もコンサルタントであるので興味深く読めた。
読み終わった今、改めて思うのは、企業戦略コンサルタントだけでなく、今の時代は地方や公共といった部分にも”戦略”の必要性は高まりつつあり、その中で生きていきたい、と思う自分がいた、ということかな。
頭を使う、知識労働の実態
本書でおもしろいな、興味深いなという話はいくつかあった。
簡単に列挙するとこんな感じ。
- コンサルティングのフィーの決定システム : 時間単価×投入時間×マルチプライヤー
- コンサルティングを成功させるにはファームの努力だけでなく、発注側の「覚悟」こそが問われる
- コンサルタントは「論理」で生きる
- 「まけろ」と迫りヤル気を減退させるより、気持ちよく働かせたほうが実質的には大幅な時間単価になる
- 長年続く成功体験はときに新しい発想の阻害要因となる=「成功の復讐」
- 問題をどう設定するか、がもっとも重大
要するに、知識労働というのは何か成果を形として示すわけではないので、その価値が十分に認められていない現状に対して、コンサルトはこういうもの、ということをわかりやすく示されている。
戦略コンサルタントではないけれど、お客さんとの関係、仕事の進め方や考え方、コンサルという生き物と習性というのは読みながら「あるある(笑)」と思いながら読んでた。
フィーの決定システムはある意味では生々しい話だけど、実際にはきわめてシステマチックな決定方法であるため、わかりやすい。
コンサルタントをうまく使う方法
これはもう極めて簡単なこと。
コンサルに委託なり何なりで金を払って仕事をさせるなら、担当のコンサルをヤル気にさせて気持ちよく働けるようにしてやればいい。
金額はだいたい最初に決まるので、後から追加で請求することはほとんどないんじゃないかと思う。
であれば、まけろとディスカウとを迫るより、ヤル気をくすぐればいい。
現場は大事だけど、コンサルの仕事は頭をつかうことであり、現場にいなくても、自宅でも、シャンプーしてても顔を洗ってても、何をしてても頭を働かせることはできる。
事実、自分も「この人のために」とか「この地域のために」と思えるところに対しては、仕事の時間以外にも当然いつも気にしているし、新聞、雑誌、ネット等いろんなメディアで情報を集めている時、引っかかるものがあれば、「これはあの組織に応用できるな」「これはあの地域で使えるかも」と思うもの。
この考えている時間は金額意外の部分ですので、気持ちで動いていると言える。
コンサルタントも人間だ。気持よく仕事をさせてくれる人に対しては、120%力を出しきって頑張りたいと思うのが心情だ。反対に、ことあるごとに仕事にけちをつけてきたり、料金を「まけろ」と言ってくるような人に対しては、手を抜くわけではないが、気持ちの乗りが圧倒的に違う。(P.233-234)
何のためにコンサルを入れるのか
コンサルティングは、組織としての戦略を見直し、変えるときにはドラスティックに変えることも必要となる。
優秀なコンサルならいろんな提案ができるだろうし、実行できるものを提案する。
しかし、実際にその提案を受け入れ、理解し、実行にうつすことができるのはクライアントだけ。コンサルはそのために説得もすればプレゼンもするけど、受け入れられなければ仕方ない。
コンサルも良い提案なら自信をもってプレゼンテーションしなければならないが、クライアントもコンサルタントが提案したことを実行に移そう、という覚悟がやはり必要です。
そこに痛みがあるかもしれない。誰かを何かを犠牲にすることもあり得る、自分が身を切る思いをすることもある。だけど、それでもやるべきことはしていかなければ、何のためにコンサルを使うのかわからない。
非常にもったいない話です。
個人的には、地方行政はもちろん、NPO、任意団体、地域活動団体などはもっとうまくコンサルタントを使うべき、と思っています。
コンサルタントという存在
今の日本において、コンサルタントというと「かっこいい」と思われるのは戦略コンサルタントだと思う。でも実際にはいろんなコンサルがいて、いろんなコンサル会社がある。
その中で、過去の積み重ねもあるんだろうけど、コンサルに対するイメージは必ずしも良くはない。
中身のない、ラベルだけ張り替えたような報告書、提案を持ち出すコンサルも実際あるでしょう。
仕事をしていていつも思うのは、コンサルだけじゃなく、これまでのインフラ整備等に関するいわゆる「ハード」の仕事に対する価格設定と、それらをどう活用していくのか、地域として今後どう生き残りをかけて道を定めていくのか、という「ソフト」の仕事に対する価格設定と大きな開きがあって、これがどうにかならないものか、と思う。
過去失ってきたコンサルに対する信頼を取り戻すことも必要で、そのためにも地方行政、NPO、任意団体、地域活動団体はコンサルをうまく使ってもらいたい、と思う。
なぜなら、自分が考えるコンサルタント像は、ともに汗をかき、ともに考え議論して、新しい枠組みを考えだしていくことであり、さらにその実行フェーズにおいても、支援することだから。
作って終わり、事例を紹介して終わりではなく、
「悪いけど教えませんよ、一緒に考えるのが仕事だから。だけど、汗もかくし話も聞く。する。一緒に考え創りだす。その後もサポートしますよ」というスタンスを信条にやっていきたいと思ってる。
二番煎じでよければ教えられるが、「一番」はクライアントとコンサルタントが一緒になってヒーヒー言って考えなければ生まれてこない(P.98)
これは自分だけじゃなくて、島根県内にもこういう考え方で働いているコンサルはいます。
今、それを何か形にできないか、と模索しているところ。
おわりに
ここ最近、コンサルタントという生き方、仕事に対する疑問が少し生じていました。
また、自分自身の生き方についても同様に。
なのでブログの更新も少し停滞してましたが、本書でコンサルタントという仕事と生き方について、改めて自信をもらったので、また頑張りたい。