題して、「みんなの地下水・利活用セミナー」です。
午後一で打ち合わせがあったため、少し遅れて参加したのですが、会場には想像以上に参加者が多かったです。
ただ、大半は土木関係者のように思われました。
あとからわかりましたが、県議や周辺の町長なども来られており、地下水に関する関心の高まりを少し感じることができました。
山陰発の水ビジネス 山陰クボタ水道用材
大田市は三瓶山ふもとの水でビジネス展開している事例報告。
毎分800リットルの水量がある中、地元自治会との信頼関係を維持するためにも取り過ぎることはしない、という。
水ビジネスに参入した経緯は、元々は公共事業で生きてきたが近年の公共事業縮小により、厳しい状況になり、新しい仕事を作っていかなくてはならないということから参入。
思いのほか設備投資にコストがかかったらしい。
外国からは軟水に対するニーズがある。海外の日本人商売人が日本の水を欲しがる。
課題は、単価が安くて流通量が増えないとペイしてこない、という点。
地下水採取に携わった経験的よもやま話 共和地建
地下水開発の三位一体というべきものがある。
- 地点選定の技術
- 掘削の技術
- 取水の技術
公民館単位でミニ井戸が一つあると安全管理上いいのではないかという提案。
防災施設としての位置づけができ、国庫補助も2分の1あるらしい。
震災の場合、地下水汲み上げが安定してできるのかという点で少し不安は残るけど、地震以外の災害であれば、水の確保は井戸で確実にできるので、これは良い提案かなと思います。
地下水の不思議な世界 新藤静雄
水循環法構想はいずれ実現するだろう、とのこと。
一番重要なのは、地下水の移動の駆動力について。一般的には位置のポテンシャル、つまり高いところから低いところへということが考えられているが、実際にはそれだけじゃない、ということ。
震災にともない発生した廃棄物はいずれ処理しなければならず、その処理は埋設となる。そうなると、それら廃棄物が地下水へどのように影響を与えるのかを知っておく必要がある。
地下水の駆動力について。
- 位置のポテンシャル
- 熱による対流
- ジオプレッシャー(高圧力)
- 断層活動による移動
- Compartmentの存在
雨水が地下水となるためには
実はすべての雨水が地下へと浸透し、地下水になるわけではない。
通常の雨なら、せいぜい地下2mくらいまでで止まる。
大雨の時にしか地下水にはならない。できれば、大雨の前まで連続的に雨があり、水みちができていて、大雨が降る。すると、地下水へとなりやすい。
ダムか森林か
ダムと森林(緑のダム)とどちらが効果的なのかということについて、定量的評価はほとんどされていない。
北海道での試みでは、通常であれば、ダムと森林とではほとんど貯水機能に差はない。
ただし、大きな水量を処理しなければならなくなると、森林の能力を超えるという結果。
この結果からも、一般的に緑のダムを過大評価している傾向がある。
世界では、water harvesting(育水)という考え方も始まっている。
地域性の強い資源である地下水の計画的利用は必要で、そのためには地下水情報の整備が不可欠だが、日本ではほとんど整備されていない。
専門職員や研究員がいない。
パネルディスカッション
最後にパネルディスカッションがあり、興味深い話が続きました。
パネルディスカッションの中で、吉谷先生が言われてましたが、会場との質疑等やり取りがあると、もっと刺激的でいい内容になったのではないか、と感じました。
パネルディスカッションで印象的だったのは、山陰クボタ水道用材の杉谷社長の言葉。
山陰は水ビジネスで地の利がある。浜田港から韓国へのロジは有望だ。という言葉。なるほどな、と。
もう一点、新藤先生はしきりに地下水汚染への懸念を表明されていました。
一度汚染されると、もう一度クリアになるまでものすごい時間をかけないとダメだと。
20年30年前の汚染箇所の事例を交えて、濃度は下がるが、汚染範囲は狭まっていない、という話もありました。
放射性物質が付着しているかもしれない廃棄物の処理を安易に考えて処理してしまうのではなく、それがどういう影響をもたらすのか、くれぐれも考えて対応してもらいたいと思いました。
それに、ことは水に留まらないとも思います。地下にもたくさんの生き物がいるはずで、その生き物が連鎖して地上の生き物、ひいては人間の口に入るわけです。
そのことをよくよく考えた対応が望まれるかな。